「リラックスして作業したいから、ラベンダーの香りを焚いている」という方、けっこういらっしゃるんじゃないかと思います。
リラックスした方が気持ちが落ち着いて、仕事や勉強に集中できそうな気 がしますよね。
でも実は、研究の世界ではちょっと違う話が出てきているんです。
「もしかしたら、作業中のラベンダーは逆効果になってしまうかも」という、ちょっと意外なお話をご紹介します。
そもそもなぜ「ラベンダー=リラックス」になったの?
ずっと昔から、人々に愛されてきた香り
ラベンダーがリラックスの代名詞になったのには、長い歴史があります。
ヨーロッパでは何百年も前から、眠れない夜や不安を感じるときに使われてきた「民間の知恵」でした。
その後、20世紀に入っていくつかの科学的な研究がラベンダーのリラックス効果を支持したことで、「やっぱりラベンダーは落ち着く香りなんだ」というイメージがより広まっていきました。
実はここに、少し見落とされていたことがあったんです。
アメリカの大学の実験でわかったこと
ラベンダーを嗅いだ時の体の反応
米国のウェズリアン大学(Wesleyan University)で行われた研究では、ラベンダーやペパーミントの香りが、私たちの頭の働きにどんな影響を与えるかを調べました。
その結果、ラベンダーを嗅いだグループには、こんな変化があったんです。
① 反応するまでの時間が遅くなった
何かに気づいて行動するまでの時間が、少し長くなりました。
「頭の動きがゆっくりになった」イメージです。
② 集中力が下がった
一つのことに注意を向け続ける力が弱まることが確認されました。
③ 眠気が増えた
頭がぼーっとして、眠くなりやすい状態になりました。
ペパーミントとの比較が面白い
一方、ペパーミントを嗅いだグループは反応が速くなって、注意力が上がったんです。
同じ「いい香り」でも、こんなに違いが出るんですね。
| 香り | 感じた変化 |
|---|---|
| ラベンダー | 反応がゆっくりに・集中しにくく・眠くなりやすい |
| ペパーミント | 反応が速く・注意力がアップ |
「リラックス」と「鎮静」は違う?
ふわっとした言葉の裏にある、大きな違い
この実験から見えてきたのは、ラベンダーの香りは「リラックス」というより、「鎮静」に近い作用があるのではないか、ということです。
リラックスは、ほどよく気持ちが落ち着いて、でも頭はちゃんと動いている状態。
体の力は抜けているけれど、意識はクリアで、必要なときには集中もできる、そんなイメージです。
鎮静は、神経の興奮をしずめて、眠りに向かわせるような働きです。
ぐっすり眠りたい夜には嬉しい作用ですが、仕事や勉強の最中だと、ちょっと困ってしまいますね。
ラベンダーが向いているのは、「しっかり休みたい」場面なんです。
在宅ワーク中にラベンダーを焚くと、どうなる?
例えば…
メールの返信が遅くなるかも
反応速度が下がるということは、「あ、これ急ぎで返さなきゃ」という判断が少し遅れたり、文章を考えるスピードがゆっくりになったりすることがあるかもしれません。
ついぼんやりしてミスが増えるかも
集中力が少し落ちると、入力ミスや確認漏れが起きやすくなることも。
「今日なんか仕事がはかどらないな」と感じるときに、実はラベンダーが関係していた…なんてこともあるかもしれません。
「眠い」のに気づきにくい
一番やっかいなのが、鎮静状態のときって「なんか心地よくて、気持ちいいな」と感じるので、パフォーマンスが落ちていても気づきにくいんです。
じゃあ、ラベンダーはいつ使えばいいの?
ラベンダーが作業に向かないというのは、決してラベンダーが「悪い香り」ということではありません。
使う場面を選べば、とても素晴らしい効果を発揮してくれます。
夜、眠れないときに
ベッドに入ってもなかなか眠れない夜は、ラベンダーが本当に心強い味方になってくれます。
枕元にほんの少し香りを漂わせるだけで、神経がすっと落ち着いて眠りに入りやすくなります。
ドキドキして落ち着かないとき
緊張や不安で胸がいっぱいになったとき、ラベンダーをひとかぎすると、少しだけ気持ちが落ち着いてきます。
大事な場面の前の深呼吸の時に使うのもオススメ。
のんびりしたい休日に
生産性とか効率とか、そういうことを一切忘れてゆっくりしたい日には、ラベンダーが最高です。
お風呂でゆっくりしながら嗅ぐのも良いですね。
お仕事中はこんな香りがおすすめ
| こんなときに | おすすめの香り |
|---|---|
| 集中して作業したいとき | ペパーミント、ローズマリー、ユーカリ |
| しっかり眠りたい夜 | ラベンダー、カモミール |
| 気分を上げたいとき | オレンジ、グレープフルーツなど柑橘系 |
「ラベンダーを焚くと集中できる気がする」という方へ
あなたの感覚も、ちゃんと正しい
「でも私、ラベンダーを焚いた方がなんとなく落ち着いて集中できるんだけど…」という方もいらっしゃるかもしれません。
その感覚、否定しなくて大丈夫です。
別の研究では、香りの効果は「その香りが好きかどうか」でも大きく変わるということがわかっています。
ラベンダーが好きで、嗅ぐと「あ、いい香り」と思える方は、そのポジティブな気持ちが集中力をそっと支えてくれている可能性があります。
ただ、もしかしたら「ラベンダーの成分が集中力を高めている」というより、「好きな香りに包まれて気分が整っているから集中できている」という仕組みかもしれません。
どちらにせよ、自分が心地よいと感じることが大切なので、無理に変える必要はありません。
まとめ:香りも、シーンで使い分けてみよう
- ラベンダーは「リラックス」よりも「鎮静」に近い働きをする
- 研究では、ラベンダーを嗅ぐと反応速度・集中力・覚醒度が下がることが確認された
- 仕事中や勉強中には向かないこともある
- 眠れない夜やしっかり休みたいときには、とても頼りになる
- 作業中はペパーミントなど、覚醒系の香りがおすすめ
「なんとなくいい香りだから」で選ぶのもとても素敵なことですが、少し意識して「今日はお仕事モード」「今日はのんびりモード」で香りを使い分けてみると、毎日がもう少し心地よくなるかもしれませんね。
※この記事はPubMed Central® で閲覧できる論文を参考に書かれています。
監修:IFA国際アロマセラピスト 山田奈保